法務の樹海

ベンチャー企業法務のおっさんによる徒然ブログ

贈収賄に関する司法取引についての一考察

ついに司法取引一発目が行われました。日経新聞は下記の通り、他紙と比べれば比較的詳細に報道しておりますので、これらの内容を参考にしつつ、司法取引のあり方について若干のコメントを加えます。結論から申し上げますと、処罰対象の妥当性の観点からも、企業統治の健全な発展という観点からも、本件のような運用は慎重であるべきだと考えています。

 

1、事実経過について

事実経過については、日経新聞が他紙と比較すれば詳細に報じています。要約すると下記のような経過になります。

贈賄、元取締役が承認か 司法取引のタイ事業疑惑 三菱日立パワー :日本経済新聞

  • 2015年2月頃、三菱日立パワーシステムズ(以下「MHPS」)が、受注していたタイの発電所建設に必要な資材をタイに持ち込もうとしたところ、タイの港の桟橋の利用手続きに不備があり資材を運び込めない事態が発生した。
  • 納期が迫る中、現地従業員は港湾当局と折衝したが、港湾当局から金銭の支払いを要求され、当時MHPS常務執行役員エンジニアリング本部長だった元取締役の承認の元、数千万円を港湾当局に対して支払った。
  • その後、内部告発によりMHPS社内で問題が発覚し、MHPS東京地検特捜部に自主的に報告を行った。

「元取締役が」承認した、と報じられており、取締役の承認があったかのような表現になっていますが、承認者の当時の肩書きは常務執行役員エンジニアリング本部長であると考えられるため、これは誤解を与える表現なのではないかと思います。

 

 

2、海外贈収賄防止の内容

次に、海外贈収賄防止について、基本的な事項をおさらいしたいと思います。不正競争防止法は、下記のように定めて海外の公務員との間における贈収賄を禁止しています。

何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。 

さらに、この規定に違反した場合、行為者本人だけでなく、その者が所属する法人も合わせて処罰されるいわゆる両罰規定が不正競争防止法22条に定められています。

 

なお、両罰規定が存在する場合の法人の処罰について、最高裁は、法人の行為者たる従業者等の選任・ 監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった過失の存在を推定し、その注意を尽くしたことの証明がないかぎり事業主も刑事責任を免れないことを判示しています(最判昭和40年3月26日)。

 

本件に引き直せば、港湾当局という外国の官公庁に対して、桟橋の利用させるという利益を得るために、数千万円を支払った従業員(行為者)と、その従業員が所属する法人(MHPS)は、実際に従業員がそのようなことが行っていたとすれば、いずれも処罰の対象となり、法人に関しては上記のような無過失を証明しない限り免責されることはないということを意味します。

 

3、司法取引の概要

詳しくは刑事訴訟法350条の2以下を熟読していただきたいと思いますが、要約すれば、ある事件の被疑者・被告人が、当該事件の共犯者又は他人の事件について、真相解明に資する供述・証拠の提出をすることを約し、検察官がその見返りとして不起訴・特定訴因での起訴・特定の求刑を行うことを約するという訴訟法条の取引を行うという内容です。

 

4、今回の司法取引の問題点

さて、以上を前提として、今回行われた司法取引の問題点を概観したいと思います。本件においては、詳細は不明ですが、法人側が検察側に捜査協力を行うことを約し、検察側が法人を不起訴とすることを約したという司法取引が行われているようです。

司法取引一般に関する問題点は、学者や刑訴法の専門家の方に任せるとして、一実務家として考えた問題点は下記の2点です。

  • 今回のケースで一時的な責任を負うべきなのは企業である可能性が高く、司法取引は不当なのではないか
  • 今回の司法取引は今後の企業の内部統制構築を困難にするのではないか

以下それぞれ詳述します。

 

①今回のケースは会社が責任を負わなくて良いようなケースなのか

海外において贈収賄が行われないようにする体制を構築する義務は、会社法上の内部統制構築義務の一つとして、会社側に課されている義務です。従って、いざ贈収賄が行われた場合にまず問われるのは、会社側が贈収賄を防止するために必要な体制を構築していたかという点であり、それが否定されれば会社側は贈収賄の発生については責任を免れ得ないというのがスタンダードな考え方といって良いのではないかと思います。すなわち、贈収賄において一次的にその責任を追及されるべきなのは会社であってその従業員ではありません。

 

上記のような内部統制構築義務が民事法上、会社に課される背景には「贈収賄により利益を得るのは会社であり、そのような動機がある以上これを統制するのは会社の義務である」という価値判断があり、刑事裁判における量刑判断の場面においても、犯罪による利益を享受する度合いが量刑判断の重要な要素とされていることからすれば、会社が利益を得る類型の贈収賄については会社が第一次的な責任を負うべきであるという考え方は、刑事責任追及の場面においても妥当すると私は考えています。

 

翻って本件についてみると、現時点で出ている情報のみからいえば、①贈賄の結果得られた利益が桟橋の利用という専ら会社にとっての利益であること、②執行役員の承認があったとしても数千万円という金額を賄賂として支払うことができる内部管理体制に問題がなかったとは考えにくいこと、という2点から、賄賂を実際に支払ったのは従業員であったとしても、その動機と機会を与えたのは会社であり、それはすなわち会社の内部管理体制に問題があったことに他ならず、今回のケースは会社が一次的責任を負うべきケースなのではないかと私は考えています。

 

検察が会社側の内部管理体制についてどのような調査を行い、どう判断したのかは不明ですが、今回のケースで、いかに有益な証拠を得るためとはいえ、不起訴まで約束したことの妥当性について、私は現段階では疑問を感じずにはいられません。

 

②内部統制構築への影響

今回のような司法取引が行われる可能性があることを前提とすると、従業員が社内通報窓口等を通じて自主的に贈収賄が行われたことを報告することを期待できなくなり、贈収賄のリスク統制がかえって困難になる恐れがあります。

つまり、会社の言う通りに報告を行ったら会社が捜査機関に報告内容を提供し「従業員は処罰してもいいが法人は勘弁してくれ」という行動を起こす可能性が高い以上、従業員としては報告を行わず逆に捜査機関に対して情報を提供して自らの処罰を軽くする動機が発生すると考えられます。そうすると、企業としては贈収賄の状況を把握することが困難となり、そのリスクをコントロールするための対策を講じ、内部統制を整備するハードルが上がるのではないかと思います。

 

そもそも贈収賄は東南アジアにおいては日常的に発生する問題であり、現場の担当者が「違法なのはわかっているが支払わなければ埒があかない」という意識を持っているケースは極めて多いと思われます。そのような中で「会社はいざとなったら従業員を捜査機関に売り渡して責任逃れをします」というメッセージにも見える司法取引が行われて、果たして現場の従業員は贈収賄防止体制の構築に協力してくれるのでしょうか。今回の取引は内部統制構築という文脈から見たときに、非常に大きな負の影響を与えるのではないかと危惧しています。

 

 

5、終わりに

以上の通り、今回のケースで会社を処罰のスコープから外したことそれ自体の妥当性への疑義と、それが会社の内部統制構築にもたらすインパクトについて雑ながらまとめてみました。

 

また、蛇足にはなりますが、MHPSは「情報を渡すから法人の処罰を勘弁してくれ」ではなく「情報を渡すから従業員の処罰は軽くしてやってくれ」ぐらいの度量を見せて欲しかったと思います。今回の司法取引で、会社のために違法行為とは言えリスクを負って行動した従業員をあっさり切り捨てて責任を逃れようとするような会社であるとのメッセージを世に放ってしまった形になりますが、そのようなイメージを払拭するに足りるだけの説明が果たして可能なのか、今後の展開が非常に気になります。

 

まだまだ書くことはいくらでもありますが、疲れてきたので一旦ここで筆をおくことにします。今後も新たな情報が出次第、適宜コメントしていきたいと思います。

 

 

 

 

 

契約書のレビューというわりと退屈な仕事

契約書のレビュー、法務部員なら誰しもが最初から最後までやり続けることになるお仕事で、参考書籍もたくさん出ています。本日は、ふと「そういえば契約書のレビューってそんなに面白くないし、面白いのがあっても一部だよね」と思ったので、前提として、契約書のレビューをなぜやるのかということは明確にした上で、面白い/面白くない契約書とは、という話からいろいろと書いてみたいと思います。

※なお、法律関連のことならなんでもやりますという法律何でも屋的法務部門を想定しています。また、便宜上、契約書のレビューにはゼロドラフトも含むものとして以下書いていきます。

 

1、そもそも契約書のレビューって何でやるの

契約当事者間の権利義務関係を明確にすること、取引に内在しているリスクを適切にコントロールすることが目的だと思います。少し詳しく述べます。

 

(1)権利義務関係の明確化

契約書を見ていると、そもそもそれを読んだだけではどういった取引が行われるのかよくわからないものが相当数あります(これは法務機能が整っていない中小企業にありがちな現象かもしれません)。また、契約書上の取引内容は明確でも、それと取引の実態が結構違っていることもあります。そういった契約書を放置しておくと、紛争が起きたときに契約書の条項が紛争解決の基準として機能しなくなるので、レビューにおいてはまず、その契約書が対象としている取引から生じる権利義務関係を明確にしておく必要があります。

 

(2)リスクコントロール

次に、リスクコントロールについて。上記のように権利義務関係を明確にすることとリスクのコントロールをすることは等価ではありません。不必要に不利な形で明確化されるということは十分に有り得ます。そこで、権利義務関係が明確にされていることを前提として、リスクが適切に分配されているかを検討し、必要であれば修正を加えるという作業が必要になってきます。

 

ここで、契約書修正の目的は「リスクを最小化すること」「リスクを低減すること」であると言われることがありますが、これはおかしいです。リスクは最小化すればいいってものでも、低減しとけばいいってものでもありません。あくまでも、取引から得られる利益とのバランスで許容可能な範囲にリスクが収まっていること、それを前提として可能な限りこちらに有利な形でリスクの配分がなされることが目的です。

 

リスク分配の話については、法と経済学の契約分析みたいなものを読んでみると理解が深まるでしょう。なお、下記参考書籍の372頁以下、リスクのコントロールそのものではないですが契約締結という行為の経済学的分析が記載されているので、暇な人は一読してみてください。

 

法と経済学

法と経済学

 

 

2、面白い契約書レビューとは

では、以上を前提に「面白い契約書」とは、という話をします。個人的見解の結論としては、大規模で複雑な取引の契約、新規事業に関する契約は楽しいかな、という感じです。

 

(1)大規模複雑取引

大きくて複雑な取引は頭も体も使うのでとても楽しいです。

 

まず契約内容を整理するだけで非常に頭を使います。当事者に聞き取りを行い、必要であれば企画会議に参加するなどして取引の全貌を把握しながら、文言で落とし込むにはどうすれば良いのかギリギリ考えていきます。いろいろな人とのコミュニケーションが発生するし、高度な情報の整理統合能力が要求されるので非常に知的に面白い作業です。

 

また、取引規模がある程度大きいと、相手も取引条件について本気で交渉してきますし、往々にして法務はその交渉に巻き込まれます。相手との交渉のテーブルに法務もきてほしいという話になればこれはもうドキドキです。自社の担当者と入念に準備し、合意可能なラインについて相談した上で交渉に望みます。

 

苦労して整理して条件をギリギリ交渉した契約書が出来上がり、合意が成立した時の「やったった」感は半端ではありません。なお、取引でトラブルが生じて、それに対して適切な条項が付されていなかった場合は、法務は容赦なく叩かれます。これもある意味醍醐味の一つです。

 

そんなこんなで、大規模で複雑な取引の契約書レビューは楽しいです。

 

(2)新規事業に関する契約

大規模で複雑な取引と同じような理由で、新規事業に関する契約処理は結構面白いです。今まで自社ではやってこなかった事業に関する契約書を作成する際には、事業・取引内容の整理とリスク事象の洗い出し、分析が必要になってきます。社内の企画会議などに参加しながら、取引の構造を把握して文言に落とし込み、リスクを分析して文言を調整し、適切なリスク分配をしていくのは、(1)と同じく知的な興奮のある仕事です。

 

ただし、利用規約を作成する場合など、必ずしもカウンターパートがいる場合ばかりではないので、作成段階では交渉が発生しないことも多く、この点では(1)からは1歩ビハインドかなという印象です。

 

(3)面白くない契約書

では面白くないレビューにはどのようなものがあるでしょうか。せっかくなのでランキングを作ってみました。

  1. NDA
  2. 外注業者との業務委託契約
  3. 雛形を使用した取引基本契約

栄えある第一位に輝いたのは契約書の帝王NDA。全世界中でもっとも多く結ばれている契約なんじゃなかろうかと思うぐらい日々締結されている契約で、プラクティスが積み上がりすぎてほぼすべての条項に最適解があるというやばい契約類型です。新人法務担当者は、入社したらとりあえずNDAをレビューさせられるのが世の習いのようですが、一瞬でできるようになります。あまりにも定型すぎてつい最近、弁護士の修正精度を上回るAIが登場しましたね(※)。

mashable.com

 

第二位は外注業者との業務委託契約です。これもほぼ定型で驚くほど面白くありません。その割に小さい外注業者だと、意外と契約文言にこだわってきたりするので面倒くさいです。合意したところで充実感とかありません。これもAIにやって欲しい。

 

第三位は雛形を使った取引基本契約です。自社の雛形を作る過程は(2)で書いた通り結構面白いんですが、いかんせん雛形を作る段階で取引条件の整理とリスクの最適分配の解が出ているので、実際に締結する際に面白いことは特にありません。他社の雛形のレビューについては、他社は他社で上記のような状態なので、正直、ネゴっても落とし所が明確なことが多く、交渉も盛り上がりません。予定調和でつまらない、それが雛形契約です。

 

そして悲しいことに、上記の3カテゴリーがだいたい契約書レビューの8割超を占めます。

 

NDAは実は工夫の余地がある契約ではあるので、ギリギリ考えていくといろいろなアイデアが浮かんではくるのですが、イレギュラーな変形を加えると相手方も嫌がるので「とりあえずいつも通りノリで結ぶか」というのが現状だと思います。秘密保持契約の実務という本が出ているので新人担当者は読んでおいて論点全部把握して高速処理しましょう。

 

秘密保持契約の実務―作成・交渉から平成27年改正不競法まで

秘密保持契約の実務―作成・交渉から平成27年改正不競法まで

 

  

3、契約書レビューとキャリア

さて結局「契約書って大部分面白くないよね」という話なのですが、この「面白くなさ」からキャリアの話を少ししたいと思います。面白くないラインキングに記載したような契約書類型は、要するに落とし所がある程度わかっていて、必要な知識を身につければわりと誰でもできる仕事であるということなので、キャリア開発の観点からいうと「長く続けるべきではない仕事」という話になってきます(その割に毎日多数湧いて出てきて辟易するのですが・・・)。

 

ということで、さっさとスキルコンプリートして次のステップに進むのが「面白くない契約書のレビュー」という仕事のはずなんですが、意外ときちんとできない人が多いというのが率直な印象です。採用面接にきた2−3年の法務経験者に「契約書レビューできますか」「できます」「じゃあこの契約書ちょっと見て確認・修正すべき点を教えてください」というやり取りをすると、結構な人があさっての方向に走り出します。なので、面白くないからといってバカにはできない部分ではあります。そして、面白くない契約書のレビューを早く正確にできない人は、当然、難度の高い契約を処理することもできません。

 

そんなこんなで大部分面白くなくて時々楽しい、でもちゃんとやらないといけない契約書レビューというお仕事なのですが、スキルとしてきちんと育てていくと下記のようなクラスチェンジが可能なのではないかと思います。

  1. M&A担当
  2. コントラクトマネージャー

M&Aは要するに大きくて複雑な契約なので、こればっかりやる人になっていくというのは一つの進化のあり方ではないでしょうか。次に、コントラクトマネージャーというのは外資に特有の職種なのですが、契約の締結から執行に至るまで面倒を見てあげる人という感じになります。どちらもそれなりに高度な仕事なので契約書レビュアーの上位職種としてはありなのかなと思います。RPGでいえば剣士から聖騎士・魔法剣士になる感じです笑。

 

何れにしても、単に契約書の文言を確認して修正できるということにとどまらず、取引の全体把握、整理、交渉まできちんとこなせるようになるという意識を持つことが、面白くないものも含めて契約書をレビューするという仕事においては、キャリア開発の上でも大事なスタンスになってくるのかなと思います。

 

4、まとめ

ということで、契約書のレビューについて由無し事を書いてきましたが、なんだかんだ言っても、やっぱり面白くないことに時間は割きたくないなというのがまとめになります。ただ、さはさりとて、きちんとできないといけないことではあるのでこれから法務キャリアをスタートさせる人は頑張りましょう!という話でした。

 

また、今回は目的からそれるので書きませんでしたが、契約書をレビューする際の観点はリスク分配だけでなく結構多彩なので(会計処理との整合性・取締役会への付議の要否・インサイダー情報の該当性等々)、この点についてはまた暇なときに書きたいと思います。

 

なお、一応、契約書修正の参考書は下記に挙げておきますが、どれか一冊買ってしっかり読むということで十分だと思います。ではまた。

 

契約書作成の実務と書式 -- 企業実務家視点の雛形とその解説

契約書作成の実務と書式 -- 企業実務家視点の雛形とその解説

 
実践! ! 契約書審査の実務

実践! ! 契約書審査の実務

 

 

ベンチャー企業への就職とは何なのか

 

2017年も残すところ後わずかとなってきましたが、皆様は、今年はどんな一年だったでしょうか。私は、先日、2年ほど働いたベンチャー企業を退職したので、その総括をしておこうかなと思います。転職を考えている方、ベンチャー企業で働いてみようと思っている方は、読んでいただければ、少しは進路選択の材料にしていただけるかなと思います。以下、転職動機、転職理由、仕事内容、仕事を振り返った感想を書いていきます。

 

1、ベンチャーに転職しようと思った動機

最大の理由は、新卒で就職した企業がまったりしていて、暇だったというところにあります。自分自身の成長実感も小さかったので「勢いがあってたくさんやることがある企業に早く転職しよう」と思って転職活動を開始しました。

 

「暇なんだったら今の企業でもっと自分からいろいろなことをやらせてもらうように働きかければいいんじゃないか」ということも考えましたが、その企業に自ら働きかけて環境を変えるより、違う企業に転職した方が早いというのが私の出した結論でした。

 

よく、転職の記事などで、今の企業でやれることを全部やってから転職を考えろみたいな文章を見ますが、自分のやりたいことをやるためにもっとも直截な手段が何なのかと言う観点から考えれば、あらゆるケースでそう言い切ることができるのか、疑問があります。

 

2、どんなベンチャーで働いていたのか/なぜその会社にしたのか

シリーズBから2年ぐらいと言うところなので、もはやベンチャーと言えるかどうか微妙なベンチャーでした。私が入った頃は人数100名売り上げ100億円ぐらいで「これから上場するぞ」みたいな状態でした。詳しくは伏せますが、テクノロジー企業です。

 

入社を決めた理由は二つです。一つは法務部門が存在しなかったこと、もう一つは上場準備中だったこと。法務機能の立ち上げについては、新卒2年目の自分にゼロからできるのか、いっちょチャレンジしてみるかと思いました。上場準備の方は、機会があればいつかやってみたいなと思っていたところだったので、ちょうど上場準備中でラッキーと言う感じです。いずれにせよ、いろいろ経験できるのは間違い無いだろうと思っていました。

 

3、何をしていたのか

法務機能の立ち上げと上場準備です。あとは投資案件も何件かやりました。それぞれサクッと書いていきます。

 

⑴法務機能の立ち上げ

契約書審査や取引審査などの審査系フローの組み上げ、契約雛形作成・契約書管理体制の構築、コンプライアンス教育の実施、内部監査などをやりました。管理部門の取締役のディレクションを受けながら、現場を見ていい感じにいろんなフローを作っていくという感じです。

 

なお、内部監査は通常、独立した部門がやることになるのですが、組織規模によっては総務とか法務が兼務することがあり、当社もそのパターンでした。内部監査については、既にある程度の枠組みはできていたのでそれをブラッシュアップする形でした。入って1ヶ月で海外拠点の監査に送り込まれたのは良い思い出です。

 

法務や内部監査への理解が微妙な会社だと非常に苦労すると思うのですが、法務リスクに対する感度がそれなりに高い会社で、社長・管理部の取締役の意識も高く、主幹事証券からの外圧もあったため、非常にやりやすい環境だったと思います。

 

⑵上場準備

上場準備には、上記の法務機能立ち上げと、上場審査対応が含まれます。後者については、主幹事証券や東証の上場審査部門から、上場に適した会社なのかを判定するためにいろいろな質問がされるので、それ答えていくお仕事になります。割とタイトなスケジュールで色々なことを聞かれるので結構大変です。また他部署との連携も必要なのでそれなりのお仕事マネジメント能力とコミュニケーション能力が要求されます。会社へのインパクトが大きく、充実感のある仕事ではありますが、かなり大変なので二度やりたい仕事ではないです笑。

 

仕事内容は下記のリンクの08以降から法務に関わるものすべてといったところです。私は証券関係のことも少しわかる人だったので、その辺も若干やりました。

 

上場までの手順(直前前々期)|上場.com

 

上場準備は、一度やると、二度目はもっとスマートに、三度目はさらにスマートにできる種類の仕事です。もし自分が、これから楽してお金を稼ぎたいのであれば、もう1社ぐらい上場準備を、今度は総責任者として入って経験し、あとはその経験を売りにしてコンサルティングなり社外役員なりをやっていくというのは一つのやり方かなと思いました。かったるそうなので絶対やりませんが。

 

⑶投資案件

M&Aや資本業務提携などに関するリーガルサポートです。結構な数の案件があったので死にそうになっていました。外部の法律事務所とも連携しながら、契約条件などを投資の実行部門とギリギリ詰めると言う感じです。この仕事は高い経験値が要求されるので、今から振り返って思えば、検討が十分でなかったり、指摘すべき点が指摘できていなかったりという点について反省は幾つかあります。投資案件への対応力向上は今後の課題かなと思います。

 

少し話は逸れますが、案件の中で、比較的マニアックなタックスヘイブンに所在する会社の買収の話が上がったことがありました。その際、そのタックスヘイブンの法律に詳しい弁護士を探したのですが、その弁護士は、3ページぐらいの簡単な契約書のレビューに50万円と言う中々痺れる見積もりを出してきて「マニアックでも需要があればこれだけのフィーが取れるんだなぁ」と感心した次第です。法律家としての生き残りの方向性として一つの理想形だなと思いました。

 

 

4、感想

⑴転職の感想

結論として、転職してよかったなぁと思っています。勢いのある成長企業だったので、要求される仕事の水準は日々上がっていきますし、自分としてはそれは心地よいものでした。また、非常に忙しくはありましたが、一気にいろいろな経験を積むという意味においては、素晴らしい環境だったと思います。

 

ただ、よろしくないなと思った点もあります。それは、自分より法律に詳しい人がいない、と言う点でした。自分で考えて自分で決めることができるという自由さは、裏返せばすべての責任を自分が負うと言うことでもあります。これは結構ストレスフルです。

 

また、法務の仕事はどうしても経験値がものをいう部分があるので、そういった部分について、法務経験が豊富な上長などに解決策やポイントを聞いたりすることができないというのは大変です。経験が少ないが故に、踏まなくても良い地雷を踏み抜く可能性がそこそこあるということです。代替策としては、外部の法律事務所にアドバイスをもらうということが考えられますが、法律事務所は社内情報に精通しているわけではないので、限界があります。

 

結局、腹をくくって自己責任でやるという身も蓋もない話になります。

 

⑵一緒に働く人たちについて

オーナー社長が経営するベンチャー企業は、社長が全てです。思いっきり社長の色が経営のあらゆる点に出てきます。したがって、社長の考えに共感できるかどうかが、その企業で上手くやっていけるかどうかを決定づける最大の要素になります。

 

幸いにして、私が勤めた会社の社長は、個人的には仕事に対するストイックさがとても尊敬できる人で、パーソナリティも好きだったので、非常に働きやすかったです。また、同僚たちも、社長が採用OKを出した人たちなので基本的には働きやすい人たちです。もし社長が好きになれなかったら?上記と逆の事態が起こります、覚悟しましょう笑

 

⑶その他:法務のプレゼンスについて

仕事をしながら強く感じたその他のこととしては、当たり前のことですが「プレゼンスをあげるのは重要」と言うことでした。法務は、金を稼ぐ部門ではないので、社内の人たちはその存在に価値を感じにくく、価値を感じてもらえないと、すごく仕事がしにくいです(言うことを聞いてもらえないし、相談にもきてくれない、情報もくれない)。ですので「法務は●●や✖︎✖︎をやってくれる部門で、それにはこんな価値があって、自分たちにはできないから絶対必要」と思ってもらえることが、法務として健全に機能するための必須の前提となります。

 

日々の仕事をきちんとやることはもちろん重要ですが、それを通じて、契約書の審査や内部監査、コンプライアンス研修などを何のためにやっているのかと言う点をきちんと理解してもらい、その存在に価値を感じてもらうことは、それ自体が、法務にとって重要な仕事の一つだと思います。これを意識するのとしないのでは、仕事の仕方やコミュニケーションの取り方が大分変わってきます。

 

5、まとめ

まとめると、まあええ感じの経験ができたなと思っています。とりとめのない内容になてしまいましたが、個人的には経験の整理ができてよかったと満足したので、ここで筆をおくことにします。

 

 

 

 

 

 

 

読書記録(J.S. ミル「自由論」)

リベラルの古典。他者に危害を加えない範囲において人は自由であるべきだ、という話。当時の状況がさっぱりわからないのと日本語訳が古くさすぎるのであまり丁寧に読む気が起きない一冊。後世の人がわかりやすくまとめたやつを読んでおけばさしあたり十分なのではないかと思っている。べき論の話で言えば、古典も原文で読んでおくのが吉と言う感じはするが、正直いろいろ読まない理由を考えてしまっているのが現状である。必要性感じた時点で原著読もうかな。

留学準備進捗状況

1. 候補大学

前回に加えてUKの2nd tierを視野に入れ始める。

USはなんか違う感が出始めている。と言うか思いつきしかないのでほぼ進捗なし。

 

2. TOEFL

オンライン英会話を始めた。スピーキングはできるようになりそうな空気感がある。

 

3. 分野選定

進捗ゼロ。今の所、法哲学、法形成、技術と法、みたいな感じ。さすがにインプット必要な気がしている。先端技術(特にオートメーション)についても学びたいし、法哲学のおさらいもしたい。ソフトローの形成に関する論文もいくつか読みたいやつがある。ちょっとどういう風に取り組むかプラン立てよう。

 

4. その他

年末ぐらいから、推薦状を書いてもらうための前振り的なお願いをしておこうと思う。後は、海外の状況に詳しい人と知り合っていろいろ聞く。

 

そんな感じ。司法修習の準備?忙しすぎて何もやってない。もはや刑法各論の構成要件すらあやふや状態。こんなんで修習できるんか。

オンライン英会話初めてみたよ

さすがに会話力ブラッシュアップしないとやばい感があるので、DMMをはじめました。とりあえず、気がついたこと、改善すべき点は毎回メモする必要があると思ったので、このブログにガンガン書こうと思います。

 

1、全体通して

  • 録音して自分の英語を聴き直せる体制にした方が良い(念のため利用規約は確認すること)
  • 終わった後は必ず自分が話した内容を再現し、自分で直した方が良い。理油は下記。
  • プロフェッショナルではないので、一定レベルを超えた細かい表現の誤りや、正確な発音の矯正はあまり期待できない。

2、教材について

  • 用意されている教材はあまりハイレベルではなく、自分のレベル感にはあっていないが、慣れるまでは教材に沿ってやるのが良さそう。
  • そもそもどのような会話をしたいのかという設計をこちらでしっかりしてから望む方が良い。さもなくばとりあえず教材に乗っかるのが良い。
  • 使ったのはこれ。さすがに簡単すぎてあくびが出た。

    http://eikaiwa.dmm.com/download/pdf/Conversation_Reviewbeginner_03.pdf

3、気がついたこと

  • self introductionはそもそも日本語で聞かれてもしっかり答えられないので、もはやこれは自己分析の問題なのではないか。なお、日本語で聞かれた時は「えっと、法律の人です。契約書いたり、たまに謝ったりしてます」みたいなクソ回答をしている。これについては十分に準備して練り上げておく、会話のパターンを分析してスクリプトを作っておくで良いと思った。
  • 自分の置かれている状況の説明(会社まで何分かかるか、どんな手段で通勤しているのか、どんな仕事をしているのか、仕事のモチベーションはどのようなものか等)も、結局細かくスクリプト化しておくという話だと思った。アドリブで話すのはスクリプトが染み付いた後で良い。
  • 発音はかなり良い方で指摘すべき点はないと言われたが、客観的にそんなわけないので、この部分は発音にうるさい人を探すかした方が良い。

4、今後の方針

  • どういったレッスンをどういう目的でしてもらいたいのか自分で設計・説明する。
  • 慣れるまでは教材を使った方が良いので、良さそうなものをあらかじめ選んでおく。
  • スカイプはテキストを使うことが多いので、別ウインドウで開いておいて使えるようにする。
  • 30代〜の人を選ぶ(会話の幅、観点が若すぎると少ない感じがする)

留学準備その2

連投です。留学準備の状況についてメモ。

 

1、分野

引き続き、テクノロジーと法哲学。深堀りできてません。

 

2、大学

研究色が強いか、テクノロジーに明るそうな大学で探しています。ざっと下記のような感じと思ってますが、どうなんですかね。最終4つぐらいに絞ろうかと思います。

カナダ

トロント

・ヨーク

イギリス

・オックスフォード

ケンブリッジ

LSE

・キングズカレッジ

米国

スタンフォード

・UCバークレー

 

3、英語

トーフル対策をちんたら実施中。

 

あまり進んでないなこれ。