法務の樹海

71期弁護士が、法務、キャリア、司法修習などについて書きます。

司法修習備忘録①

71期の二回試験が終わりました。やらかしたかどうかという不安よりも疲労感がすごいです。さて、一応、事実上司法修習が終了したので、後進の皆様のために、少しでも有益な情報を備忘録的にまとめておこうと思い、筆をとった次第です。こんなところに気を付けながら修習すれば有意義にすごせるんじゃないかということを、ザクっと書いていきたいと思います。

 

  

1、貸与金について

71期からは給費制が一部復活していますが、同時に、月々10万円を最高裁判所から借り受けることが可能です。一般的に、借金が増えるのはあまり望ましいとは言えませんが、使わなくてもいいのでとりあえず借りておくべきだと思います。

 

13万5000円に、住居費3万5000円を足した17万円は、普通に生活をし、書籍を買って飲み会に行って就職活動するだけでほとんどなくなってしまう金額です。上手に使えば決して司法修習を乗り切れない金額ではないですが、突然の旅行の誘いや、就職活動での移動、弁護士会登録費用など、急にまとまった支出が必要になる場面はいくらでもあります。

 

最近の新人弁護士の給料の相場は400万円~700万円だと思われますので、10万円毎月借りて120万円の借金があったとしても1年で余裕で返せます。しかも無利息なのでとりあえず借りておきましょう。

 

2、実務修習で起こる色々とその対処

実務修習は集合収集のようにカリキュラムが決まっているわけではなく、受け入れ先の実務家に指導に関する大きな裁量が認められています。それゆえに、色々な問題が起こり得えます。以下では、各修習で起こりがちな問題とそれに対する対処法を記載します。

 

(1)検察・裁判所で放置されないようにする方法

検察・裁判所では指導担当者が忙しすぎて放置されることがあります。次の順序でお願いしてみましょう。①指導担当者に言う、②指導担当者の上司に言う、③教官に言う。まずは指導担当の人に「やることない」といってみましょう。次に、指導担当に言ってもダメな場合は、指導担当の上司に「指導担当が忙しそうにしててやることない」といいましょう。それでもだめなら教官に「なんもくれへんからなんとかしてくれ」といいましょう。順序を間違えて先に教官や指導担当の上司に言うと「指導担当に言ってみた?」と押し返されます。なお、②の前に、指導担当者の周りにいる同僚にお願いしてみるのもいいでしょう。いずれにしても「あ、これ放置されてるっぽいな」と思ったら早めにアラートを上げましょう。

 

※ちなみに検察と裁判所で暇なときにやらせてもらえることには、次のようなものがあります。

①検察

・証人テスト見学←おすすめ

・取り調べの見学←おすすめ

・既済記録に基づく起案

・公判前整理手続への同席

・事件記録の閲覧

・裁判傍聴

 

②裁判所

裁判所では起案したのを見てもらうのが一番教育効果高い気がします

・既済記録に基づく起案←おすすめ

・調停傍聴

・少年事件傍聴

・公判前整理手続の傍聴

・裁判傍聴

 

(2)弁護修習

最も当たり外れが大きいのが弁護修習ですが、実は弁護修習は自由度が高く、問題ある指導者にあたってもリカバリーは可能です。揉めるパターンには下記のようなものがありあす。

 

・性格の不一致…離婚原因ナンバー1(非常によくある)

・放置プレイ…忙しすぎて放置されます(よくある)

・ハラスメント…いわずもがなにヤバい(よくある)

・投げっぱなしジャーマン…課題はくれるがフィードバックがない(たまにある)

・修習生=労働力…普通に働かされる感じで起案させられる(まれ)

・偏執狂…偏った事件しか取り扱いがない(まれ)

 

上記のような事態が生じた場合、まずは指導担当弁護士に丁寧に、しかし断固として申し出ましょう。「●●という点が××なので▲▲していただきたいです」「●●は非常に不快ですのでやめてください」といった感じです。普通の指導担当なら色々気を回して、問題解決を図ってくれます。直接言ってもダメそうな場合、別の窓口にクレームを入れる必要があります。通常は弁護士会の修習委員or弁護教官です。修習委員から指導担当弁護士に確認が入ることもあれば、下記のような対応がとられることもあります。

 

・指導担当チェンジ

修習委員は修習地にいる指導担当弁護士のクセを結構知っているので、「ああ確かに●●先生はそれやりそうよね」というパターンにはまると、速やかに対応してくれます。そうでない場合であっても、きちんと情報を共有し、どういった点に問題があるのかをレポートすれば、指導担当を変えてくれることもあります。ただ、そこまでいくのはまれかなというのが実感です。私のときは、隣の県で放置プレイを原因とする指導担当替えが行われたという噂を1件耳にしました。

 

・里子修習の利用

我慢できないほどではないが微妙にそりが合わない先生と当たってしまった時の対処法です。委員会の飲み会や外で知り合った先生のところで一時的に修習させてもらう方法です。一般的には、あまり刑事弁護をやっていないところに配属された修習生が刑事弁護を見るために違う事務所に行ったり、あるいは指導担当弁護士と仲の良い先生のところにいくというようなケースがありますが、これを利用します。「●●の事件が見たいのですが、先生はやっておられますか?もし来る予定がないようでしたら●●先生のところに里子で行きたいのですが…」的な感じで提案してみましょう。

 

いずれにしても、困ったことが起こった場合には色々と解決方法があるので、我慢せずに周りの人や教官に相談しましょう。

 

(3)パワハラ・セクハラを受けたときの対応

弁護・裁判・検察問わず、ハラスメントをしてくる人は普通にいます。法曹なのにリスク感覚を持ち合わせていないどうしようもない人たちです。問答無用で教官か司法研修所のセクハラ相談窓口に通報しましょう。躊躇してはいけません。あと「これってセクハラ・パワハラかな?」と迷った時も、該当性を確認する趣旨で連絡しましょう。セクハラとかパワハラをしてくる人は、後輩のためにも、排除されたほうがいいと思います。

  

3、全国プログラムに行こう!

選択修習では全国と地方のプログラムを選択することができます。 特に全国プログラムはメニューも豊富で普段入ることのできない組織で研修することができるので、非常にお勧めです。国際機関や官公庁、大企業などは結構人気で競争倍率も高いようです。また、法テラスの過疎地修習も意外と人気があります。

 

おすすめなのは、現在の修習先や自分の進路と異なるプログラムを選ぶことです。例えば、大手渉外事務所に内定が決まっているのであれば過疎地の法テラスを、地方の弁護士事務所への就職が決まっていて実務修習も地方の事務所なら都会の渉外事務所を、といった感じで選んでみるのがいいかなと思います。あとは企業法務中心の事務所であれば、カウンターパートになる企業の法務部に行ってみるのもお勧めです。いずれにせよ、内定先・就職先でやる予定のことは就職してから十分に取り組むことができるので、将来的なキャリアの選択肢を広げたり、多角的な視座を身に着けるという観点から、上記の選び方をしてみるのがいいのかなと思います。

 

申し込まない人も結構多いみたいなのですが、お金を払って研修しようと思うと何十万もとられるような研修先のラインナップになっているので、積極的に申し込んでみるのがいいのかなと思います。

 

4、自己開拓プログラム

自分で選択修習先を見つけてきて修習するというやつです。私の周りでは企業や公的機関に電凸したりして、まさに自己開拓をしている人が何人かいました。ちなみに、全国プログラムに申し込んでいる人が大部分だったので、比較的意欲的な修習生が多い修習地だったのかもしれません。

 

「そんな急にお願いして大丈夫なものなの?」と思うかもしれませんが、大丈夫だったり大丈夫じゃなかったりします。とはいえ、社会人として礼儀正しく接触して、丁寧に趣旨とやってみたいことを説明すれば、そこまで冷たくあしらわれることはないんじゃないかなというのが周りを見ていた印象です。

 

ただ、受け入れてもらう確度を高めるためには、やはり人脈を利用したり(修習先の先生の知り合いの会社や、就職先の先生のなじみの深い公的機関に、先生を通して紹介してもらう等)、受け入れ実績があるところ(先輩に聞いたり、ひょっとしたら研修所が教えてくれるかもしれません)に連絡してみるのがいいでしょう。あとは、大学の先生とかも仲良くしている組織を紹介してくれたりするので、連絡をとってみるのもいいでしょう。

 

ちょっとハードルは高いですが、仕事がはじまってからの営業の練習と思って、いくつかチャレンジしてみるのがいいんじゃないでしょうか。なお、就職先や修習先の事務所とコンフリクトがないかは、必ず確認するようにしましょう。

 

5、二回試験対策

まだ合格してないので書きようがありません笑。受かってたら「最低限こんなことやっとかないと死ぬ」ということを書きたい、書ければいいな…と思っています。受かっていたら。

 

6、まとめ

そんなこんなで、楽しく修習生活を送りましょうということになりますが、ポイントは「はっきり丁寧にモノを言うこと」だと思います。自分がどういうことをしてほしくて、それがどういう理由なのか、問題がどこにあるのかをきちんと言語で表現するのは、仕事をする上でも必要なことなので、この際練習と思ってどんどん言うようにしましょう。

 

 

刑事弁護の基礎知識 第2版

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