法務の樹海

71期弁護士が、法務、キャリア、司法修習などについて書きます。

二回試験対策とNG行動

本日二回試験の合格発表でしたが、合格していました。99%合格する試験なのですが、やはり合格していると嬉しいものです。今年度の不合格者の人数は16人ということで、司法研修所ももはや不合格者は極めて例外的な場合にしか出さないという方針に転換したことが、去年の結果を見ても明らかになったのではないかと思います。さて、早速調子に乗って、二回試験で事故らないために、最低限何をすればいいのか、書いていきたいと思います。

 

 

1、交通・体調

合格率に鑑みるに、不合格というのはもはや事故・天災に遭ったと考えるべきなのではないかと思います。それを前提とすると、普通の司法修習生にとって最も気をつけるべきなのは下記の二点なのではないかと思います。

  • 交通トラブルで会場に時間通りに到着できない
  • 体調を崩して試験が受けられない

解決方法は明確で、①前者については会場の近くにホテルを借りること、②後者については少なくとも試験2週間前はハードな日程で旅行に行ったり飲み会で深酒をしたりといった逸脱行動を避けて、寝たいだけ眠り、適度に運動する、という二点だと思われます。起案や講義に普通に取り組んでいる司法修習生が気にすることは以上です。どうしても不安な人だけ、以下の各科目についての説明を読んでください。

 

2、刑弁

「刑事弁護講義ノート」という薄い冊子が配られるのですが、嘗め回すように読んでください。そこに刑事弁護起案のすべてが書かれています。なお、即死になるのは下記です。

  • 無罪弁論の起案で情状を書く
  • 無罪弁論の起案で有罪弁論を書く
  • 有罪弁論(認定落ち)の起案で無罪弁論を書く
  • 争点を無視する

以上のような逸脱行動を防ぐためには、被疑者の言い分は最低3回読みましょう。被疑者が言っている結論(「俺はやってない」「殴ったけど正当防衛」「財物奪取の意思はなかった」)と矛盾している結論で起案したら死にます。

 

3、刑裁

「刑事事実認定ガイド」「プラ刑」「プロ刑」は穴が開くほど読んでおくべきです。特に刑事実認定ガイドの後半、考え方がまとめてある部分は覚えるほど読んでおきましょう。安心感につながります。即死になるのは下記です。

  • 争点整理の結果を無視する
  • 要証事実又は重要な間接事実について、直接証拠となる供述の信用性を一切検討しない
  • 推認力の検討に際して反対仮説を一切考慮しない

「普通に司法研修所の教育受けてそんなことするわけねーだろ」って思いました?いや、まあそうなんですけど…。なお、私の聞いたところによると、過去「被告人供述は信用できないから被告人は有罪」という痺れる起案をした人も落ちたということです。

 

4、検察

「検察 終局処分起案の考え方」は記載例のところを暗記するぐらい読んでください。特に共犯の書き方は、なぜか油断して適当にしか読んでいない人がまあまあいますが(そんな人でも合格するんですが…)、安心のためには読んでおくべきです。即死演技は下記です。

  • 「終局処分起案の考え方」の形式と異なる形式で起案する
  • 犯人性の検討しか求められていない事案で犯罪の成否だけ検討するなど、問題文が求めていることを全く理解していない
  • ごくごく基本的な構成要件のあてはめで間違う(どう見ても放火なのに器物損壊で起案するというレベルの間違い)

上の二点は冷静ならミスしませんが、一番下のやつはちょっと不安ですよね。実務修習中、扱う事件について逐一基本書を読んで書かれている構成要件を確認すれば、こういったミスは防げると思います。

 

とはいえ、保険をかけるという意味で各論の教科書はざっと読んでおきましょう。刑弁・刑裁の対策にもなるので、おすすめです。安心感を得るという意味では、修習中にあまり出会わない罪(横領・背任・贈収賄・文書偽造)あたりを読んでおくと「こんなマニアックな奴が出ても最低限のことはできる」と自信を持つことができます。

 

私は愛用していた井田良の薄い方の刑法各論の教科書を最後に3回ほど読み直しました。構成要件と解釈がコンパクトにまとまっていて記載も平易なので読みやすいんですよね。まあ司法試験を受験したときに使っていた教科書かまとめノートを見返しておけばいいと思います。

刑法各論 <第3版> (新・論点講義シリーズ)

刑法各論 <第3版> (新・論点講義シリーズ)

 

5、民弁

「新問題研究要件事実」「事例で考える民事事実認定」「紛争類型別の要件事実」は民裁で読めと言われるやつですが、必ず読んで記憶しておきましょう。また、「民事弁護の手引き」に掲載されている訴状・答弁書準備書面・最終準備書面の記載例は読んでおきましょう。いずれも修習中に何度か起案することになるのでそこまで神経質になる必要はありませんが、書面の形式の認識があいまいだと不安を感じませんか?

※民事執行・民事保全は手薄になりがちですが、民弁講義の際にレジュメが配られるのでそれを読んでおけば小問対策としては十分です。でも、実務に出てから困るのでさすがにちゃんと勉強しといたほうがいいんじゃないですかね?笑

 

即死起案は下記です。

  • 訴訟物をド派手に間違う(主要事実が全部ひっくり返って記録に現れた証拠が殆ど使えなくなるくらいのミス)
  • 原告・被告の取り違え
  • 重要な書証(特に直接証拠たる類型的信用文書)に一切言及しない

なお下記の類型別は白表紙には入っていません。一応参考までにamazonのリンクを張っておきますが、研修所内の本屋で買った方が割引がついて安いです。

紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造

紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造

 

 

6、民裁

民弁で上げた三つを読んでおきましょう。特に「事例で考える民事事実認定」は民裁のバイブルと言っていいものなので、よく読んでおきましょう。即死起案は民弁と似ていますが下記の通りです。

  • 訴訟物をド派手に間違える
  • 判断枠組みを一切記載せず、かつ意識もしていないような起案をかます(事例で考える民事事実認定には、4種類の判断枠組みが記載されています。争点となっている主要事実の認定について、それがどの判断枠組みに従って認定すべきものなのかを一切示さずに起案するのはかなり危険球のようです)
  • 争点を全部外す(訴訟物をド派手に間違えると外します)
  • 文書の成立の真正に争いがある事案で「第三者による印章の仕様の可能性があるから」といってあっさり成立の真正を否定し、間接事実(書面が作成されるに至った経緯や書面作成後の当事者の言動に係るもの)を一切検討しない。

訴訟物の書き方は記憶があいまいだと本番で「あれ、これでよかったのかな…?」って不安になるので、完全に記憶しておくと安心です。

 

7、試験中の注意

次に、試験中にやらかすと事故る確率が上がる行為を記載します。

(1)時間ギリギリまで起案し続ける

時間ギリギリまで起案し続けると、起案用紙の順番が前後していないかなどといった形式的な重要ポイントをチェックする時間がなくなります。例えば、綴りこまれていた用紙の順序が無茶苦茶だったらさすがに落ちると思いませんか?ということで、かならず10分前には無理やりでも起案を完了し、形式面のチェックを行う時間に当てましょう。

 

(2)何度も差し替えを行う

何度も答案用紙の差し替えを行うと、用紙の順序の前後が起こるリスクが高まります。差し替えは極力避けて、使えるところは使うか、空欄に書くかした方がいいです。尤も、チェックの時間をきちんととることができるのであればそこまで神経質になる必要はありません。ただ、そもそも何度も答案用紙の差し替えを行っている時点でかなり精神的に危うい状態なので、すこし深呼吸をして落ち着いたほうがいいと思います。

 

(3)常備薬を忘れる

これは最初に述べた点と重なりますが、緊張でおなかを下してしまいがちな人であれば下痢止めを用意したり、アレルギーがある人は抗ヒスタミン薬を用意したりといったことを忘れないようにしましょう。体調不良は思考にノイズを発生させる主要な要因となりえます。

 

8、まとめ

二回試験で注意すべき点・やっておいた方がいいことはだいたい以上の通りとなります。普通の人ならそれぐらいやるでしょということばかりだと思われたと思いますが、その通りです。要するに、講義を一切聞かず、起案のルールを一切守らない人か、体調不良・交通トラブルでそもそも受験できなかった人が落ちる試験だと思えばいいと思います…

 

いやあ、しかし、99%合格の試験、逆にプレッシャーがすごいですね。これから受験する皆様、頑張ってください笑