法務の樹海

ベンチャー企業法務のおっさんによる徒然ブログ

ベンチャー企業への就職とは何なのか

 

2017年も残すところ後わずかとなってきましたが、皆様は、今年はどんな一年だったでしょうか。私は、先日、2年ほど働いたベンチャー企業を退職したので、その総括をしておこうかなと思います。転職を考えている方、ベンチャー企業で働いてみようと思っている方は、読んでいただければ、少しは進路選択の材料にしていただけるかなと思います。以下、転職動機、転職理由、仕事内容、仕事を振り返った感想を書いていきます。

 

1、ベンチャーに転職しようと思った動機

最大の理由は、新卒で就職した企業がまったりしていて、暇だったというところにあります。自分自身の成長実感も小さかったので「勢いがあってたくさんやることがある企業に早く転職しよう」と思って転職活動を開始しました。

 

「暇なんだったら今の企業でもっと自分からいろいろなことをやらせてもらうように働きかければいいんじゃないか」ということも考えましたが、その企業に自ら働きかけて環境を変えるより、違う企業に転職した方が早いというのが私の出した結論でした。

 

よく、転職の記事などで、今の企業でやれることを全部やってから転職を考えろみたいな文章を見ますが、自分のやりたいことをやるためにもっとも直截な手段が何なのかと言う観点から考えれば、あらゆるケースでそう言い切ることができるのか、疑問があります。

 

2、どんなベンチャーで働いていたのか/なぜその会社にしたのか

シリーズBから2年ぐらいと言うところなので、もはやベンチャーと言えるかどうか微妙なベンチャーでした。私が入った頃は人数100名売り上げ100億円ぐらいで「これから上場するぞ」みたいな状態でした。詳しくは伏せますが、テクノロジー企業です。

 

入社を決めた理由は二つです。一つは法務部門が存在しなかったこと、もう一つは上場準備中だったこと。法務機能の立ち上げについては、新卒2年目の自分にゼロからできるのか、いっちょチャレンジしてみるかと思いました。上場準備の方は、機会があればいつかやってみたいなと思っていたところだったので、ちょうど上場準備中でラッキーと言う感じです。いずれにせよ、いろいろ経験できるのは間違い無いだろうと思っていました。

 

3、何をしていたのか

法務機能の立ち上げと上場準備です。あとは投資案件も何件かやりました。それぞれサクッと書いていきます。

 

⑴法務機能の立ち上げ

契約書審査や取引審査などの審査系フローの組み上げ、契約雛形作成・契約書管理体制の構築、コンプライアンス教育の実施、内部監査などをやりました。管理部門の取締役のディレクションを受けながら、現場を見ていい感じにいろんなフローを作っていくという感じです。

 

なお、内部監査は通常、独立した部門がやることになるのですが、組織規模によっては総務とか法務が兼務することがあり、当社もそのパターンでした。内部監査については、既にある程度の枠組みはできていたのでそれをブラッシュアップする形でした。入って1ヶ月で海外拠点の監査に送り込まれたのは良い思い出です。

 

法務や内部監査への理解が微妙な会社だと非常に苦労すると思うのですが、法務リスクに対する感度がそれなりに高い会社で、社長・管理部の取締役の意識も高く、主幹事証券からの外圧もあったため、非常にやりやすい環境だったと思います。

 

⑵上場準備

上場準備には、上記の法務機能立ち上げと、上場審査対応が含まれます。後者については、主幹事証券や東証の上場審査部門から、上場に適した会社なのかを判定するためにいろいろな質問がされるので、それ答えていくお仕事になります。割とタイトなスケジュールで色々なことを聞かれるので結構大変です。また他部署との連携も必要なのでそれなりのお仕事マネジメント能力とコミュニケーション能力が要求されます。会社へのインパクトが大きく、充実感のある仕事ではありますが、かなり大変なので二度やりたい仕事ではないです笑。

 

仕事内容は下記のリンクの08以降から法務に関わるものすべてといったところです。私は証券関係のことも少しわかる人だったので、その辺も若干やりました。

 

上場までの手順(直前前々期)|上場.com

 

上場準備は、一度やると、二度目はもっとスマートに、三度目はさらにスマートにできる種類の仕事です。もし自分が、これから楽してお金を稼ぎたいのであれば、もう1社ぐらい上場準備を、今度は総責任者として入って経験し、あとはその経験を売りにしてコンサルティングなり社外役員なりをやっていくというのは一つのやり方かなと思いました。かったるそうなので絶対やりませんが。

 

⑶投資案件

M&Aや資本業務提携などに関するリーガルサポートです。結構な数の案件があったので死にそうになっていました。外部の法律事務所とも連携しながら、契約条件などを投資の実行部門とギリギリ詰めると言う感じです。この仕事は高い経験値が要求されるので、今から振り返って思えば、検討が十分でなかったり、指摘すべき点が指摘できていなかったりという点について反省は幾つかあります。投資案件への対応力向上は今後の課題かなと思います。

 

少し話は逸れますが、案件の中で、比較的マニアックなタックスヘイブンに所在する会社の買収の話が上がったことがありました。その際、そのタックスヘイブンの法律に詳しい弁護士を探したのですが、その弁護士は、3ページぐらいの簡単な契約書のレビューに50万円と言う中々痺れる見積もりを出してきて「マニアックでも需要があればこれだけのフィーが取れるんだなぁ」と感心した次第です。法律家としての生き残りの方向性として一つの理想形だなと思いました。

 

 

4、感想

⑴転職の感想

結論として、転職してよかったなぁと思っています。勢いのある成長企業だったので、要求される仕事の水準は日々上がっていきますし、自分としてはそれは心地よいものでした。また、非常に忙しくはありましたが、一気にいろいろな経験を積むという意味においては、素晴らしい環境だったと思います。

 

ただ、よろしくないなと思った点もあります。それは、自分より法律に詳しい人がいない、と言う点でした。自分で考えて自分で決めることができるという自由さは、裏返せばすべての責任を自分が負うと言うことでもあります。これは結構ストレスフルです。

 

また、法務の仕事はどうしても経験値がものをいう部分があるので、そういった部分について、法務経験が豊富な上長などに解決策やポイントを聞いたりすることができないというのは大変です。経験が少ないが故に、踏まなくても良い地雷を踏み抜く可能性がそこそこあるということです。代替策としては、外部の法律事務所にアドバイスをもらうということが考えられますが、法律事務所は社内情報に精通しているわけではないので、限界があります。

 

結局、腹をくくって自己責任でやるという身も蓋もない話になります。

 

⑵一緒に働く人たちについて

オーナー社長が経営するベンチャー企業は、社長が全てです。思いっきり社長の色が経営のあらゆる点に出てきます。したがって、社長の考えに共感できるかどうかが、その企業で上手くやっていけるかどうかを決定づける最大の要素になります。

 

幸いにして、私が勤めた会社の社長は、個人的には仕事に対するストイックさがとても尊敬できる人で、パーソナリティも好きだったので、非常に働きやすかったです。また、同僚たちも、社長が採用OKを出した人たちなので基本的には働きやすい人たちです。もし社長が好きになれなかったら?上記と逆の事態が起こります、覚悟しましょう笑

 

⑶その他:法務のプレゼンスについて

仕事をしながら強く感じたその他のこととしては、当たり前のことですが「プレゼンスをあげるのは重要」と言うことでした。法務は、金を稼ぐ部門ではないので、社内の人たちはその存在に価値を感じにくく、価値を感じてもらえないと、すごく仕事がしにくいです(言うことを聞いてもらえないし、相談にもきてくれない、情報もくれない)。ですので「法務は●●や✖︎✖︎をやってくれる部門で、それにはこんな価値があって、自分たちにはできないから絶対必要」と思ってもらえることが、法務として健全に機能するための必須の前提となります。

 

日々の仕事をきちんとやることはもちろん重要ですが、それを通じて、契約書の審査や内部監査、コンプライアンス研修などを何のためにやっているのかと言う点をきちんと理解してもらい、その存在に価値を感じてもらうことは、それ自体が、法務にとって重要な仕事の一つだと思います。これを意識するのとしないのでは、仕事の仕方やコミュニケーションの取り方が大分変わってきます。

 

5、まとめ

まとめると、まあええ感じの経験ができたなと思っています。とりとめのない内容になてしまいましたが、個人的には経験の整理ができてよかったと満足したので、ここで筆をおくことにします。